大田区ものづくり企業のご紹介

2019/12/05

“待ち工場のイメージから、仕事を取りに行くチャレンジする企業へ脱却” ―事業承継が進み、新分野・技術にチャレンジする企業集積を力に!

一般社団法人 大田工業連合会 会長/株式会社昭和製作所 会長 舟久保利明氏

金属材料を中心とした材料試験片・超音波深傷用試験片・試作部品を扱う「株式会社昭和製作所」の2代目、そして一般社団法人大田工業連合会の会長である舟久保利明氏。
長年“ものづくりのまち・大田区”に携わってきた舟久保氏に、大田区の産業の現状と抱えている問題、そして未来への展望について話を訊いた。
舟久保氏の目には、今の“ものづくりのまち・大田区”はどのように映っているのだろうか。

これから企業に求められることは、これまでの下請けという考え方を完全に捨て、時代にフィットした新しい仕事を自ら作り、自ら提案する積極的な姿勢です

――まずは大田区内の産業の現状と課題についてお教えください。

江戸時代の麦稈(ばっかん)真田(さなだ)(麦わら細工)が発祥の大田区のものづくりですが、バブル期を境に日本全体の産業構造の変化もあり、大田区の中小製造業も減少が続き、現在は3000社余りで推移しているが、製造品出荷額は東京都ではトップの4000億円レベルとなっています。
麦稈(ばっかん)真田(さなだ)の頃から周りの人たちとの繋がりが強くお互いが助け合う文化がこの地域には根付いており、それが大田区の仲間回し*1に繋がっていますが、大田区内の中小企業と大企業との関係は、上からシャンパンを注いで下のグラスがどんどん満たされていくシャンパンタワーのような下請け構造でした。
中小企業が大企業からもらう仕事というのは、余人をもって代えがたき仕事か、大量生産故に大企業がやりきれなかった仕事のどちらかです。後者は今ではもう壊滅的で多くの会社が倒産しました。生き残れた会社は、そのほとんどが前者。他にはない技術力を持っていた会社であり、そこからさらに技術を磨き上げ、顧客のニーズに対応し、課題解決を図ることができた会社です。

――時代の変化に合わせた対応力が大切になってきますね。

グローバル化、デジタル化など日々刻刻と変化していく時代に対応するために、例えば、地方や世界に目を向けてみる、異なる分野に進出してみる、取り扱えるものを増やしてみる、補助金や助成金を活用して新たな分野を切り開いていく、など、色々な考え方、やり方があると思いますが、常に先のことを考え新しいものづくりをしていくことが大切です。
すでに異分野との接触、助成金の獲得、新製品の開発、様々な方向に目を向けて新たなものづくりをしている企業もありますし、これまでB to BだったものがB to Cに転じ、販路確保やマーケティングに力を入れている企業も増えています。
これから企業に求められることは、これまでの下請けという考え方を完全に捨て、時代にフィットした新しい仕事を自ら作り、自ら提案する積極的な姿勢です。

――「デジタル化」という言葉が出ましたが、製造現場でもアナログからデジタルへ移行し、様々な技術を取り入れる企業が増えたかと思います。

QCD(Quality・Cost・Delivery)という概念がありますが、コストが抑えられる、短納期が可能になる、それならば積極的にデジタル化していくべきだと思います。
「インダストリー4.0」*2によって、大田区の企業もデジタル化が進んでいて、昔の手作業の時代から比べると、IoT、スマートファクトリー化によってスピードの速いものづくりを提供することが可能になりました。
アナログな作業のうち何をデジタル化すればいいのか、それを見極めることが大切だと私は考えます。デジタル機械を導入する、職人の技術をITを駆使して数値化し継承していく、様々な面でのデジタル化がありますが、利点があるのであればやらない理由はありません。

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3代目たちを見ていると積極的に勉強し新しいことにチャレンジしている印象があります

――デジタル化は製造だけでなく、多方面で利点がありますね。

WEBやSNSが発達し、販売&受注面のデジタル化も進んでいます。WEBやSNSを用いて情報を発信し、新しい仕事を受注していくというのは、現代で仕事を取りに行くために最も簡単な方法だと思います。
小規模な会社はそこまで手が回らずにWEBサイトも最初に作ったままという会社も少なくありませんが、WEBサイトをリニューアルすることで仕事が増えるというのは私自身の実感としてあるし、会社のツールとしてWEBをどんどん活用してもらいたいので、今後推進していきたいと思っています。

――下請けという意識を捨て新しいものづくりをしていくには、人材も重要なポイントかと思います。

そうですね。昔、我々の町工場の多くは、“待ち工場”と言われていたけれど、今は発注が来るのを待つのではなく、こちらから積極的に仕事を取っていかないと生き残れません。しかし残念ながら中小企業にとって飛び込み営業はとても苦手な分野です。これは「人材を育てられない」「多くの人材を確保できな」という中小企業が抱えている課題でもあります。
昔は時間の流れも緩やかで時間をかけて人を育てることができましたが、今はあらゆることのスピードが速くなって、企業で人材育成をすることが難しくなっています。これからは各企業で人材を育てていくという考えと一体となって、地域の行政や教育機関が主体となって企業の負担にならないキャリア教育*3を構築しなければいけないと思っています。

――中小企業が抱える問題としては、事業承継も挙げられます。

大田区には昭和20年代に創業した会社が多く、現在は3代目が受け継いでいるという会社が多くあります。3人以下の小規模な会社に関しては事業承継がとても難しいのが現実です。
私たち2代目の時代は右肩上がりで、黙っていても注文が入る時代でしたが、現在は経営についてきちんとした知識がないと難しい時代になっています。
親から引き継いだ3代目たちを見ていると、厳しい環境の中で、待ちの姿勢ではなく積極的に新しい産業分野や技術に挑戦し事業領域を広げている、という印象を持っています。

――若い世代の人たちが積極的なのは心強いですね。

そうですね。彼らを見ると優秀な人材が大田区には揃っているな、と感じますよ。現在、羽田跡地開発も進んでいますが、技術と技術、人と人を繋いでいく、コーディネーター機能を持った施設として、羽田のものづくりの拠点として、世界中から受注した仕事を大田区でこなしていく、そんな未来を思い描いています。
この施設とビジネスマッチングサイトが上手く融合し機能していくと、会社側も発信がしやすくなって、積極的な新しいものづくりがしやすい環境が整うと思います。 チャレンジ精神旺盛なこれから先の世代に期待しています。

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<仲間回し>

工場が集積している大田区では、自分のところでは「切削」作業しかできなくても、「穴あけできる工場」「研磨ができる工場」といったように、近くの工場に工程をまわし発注された製品を納品するネットワークが築かれている。

<インダストリー4.0>

製造業におけるオートメーション化およびデータ化・コンピュータ化を目指す昨今の技術的コンセプトに付けられた名称である。

<キャリア教育>

一人一人の社会的・職業的自立に向け,必要な基盤となる能力や態度を育てることを通して,キャリア発達を促す教育(中央教育審議会「今後の学校におけるキャリア教育・職業教育の在り方について(答申)」(平成23年1月31日))と定義されている。大田区では、区立中学2年生の「職場体験事業」や高校・大学等の「インターンシップ」などが実施されている。

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